Tはこの資金調達を実行することに賛成し、我々は仕事をいただいた。
このローンの米国での販売には、CSーFBのプライベートーファイナンスーグループを招聘し、手数料を分けて手伝ってもらった。 結果日本では考えられないほど長期の期間である最長21年のローンを1億2500万ドル調達することができた。
1999年には同様の形式で1億2750万ドル調達した。 この2回の調達で、武富士は米国の保険会社21社から円にして320億円を直接調達できた訳である。
1999年の場合、おりからの邦銀の信用不安で、銀行としては最も財務内容のいい東京MB銀行でさえ米国市場で資金調達するのは難しく、FBの日本人投資銀行家で、非米系企業が発行する米国私募債取り扱いの専門家である3宅孝司氏のグループはTに対して画期的な仕事をしてくれた。 なお、これは彼らが取り扱った初の日系企業米国私募債でもあった。

武富士の2回目の取引が終わって間もなく、国会でノンB社債法案が通り、一定以上の財務内容をもつ金融会社は自由に日本国内市場で債券を発行できるようになった。 このように規制の改正というのは、常に実態の後追いである。
言い換えるならば、市場の改革とは政府が与えてくれるものではなく、自ら生み出すべきものなのである。 ウォール街の者は常にそういう気概を持って生きている。
あと1回のバッティングーチャンス私にとって次の課題は「預金することも惜りることもできる銀行」を作ることであった。 その具体案は、日本の消費者金融会社の50パーセント以上の株式を外銀に持たせ、子会社化し、大口融資規制などに規制されることなく外銀が持つ円預金をその金融子会社に回金し、貸付原資にすることだった。
そして銀行のATMと金融会社の自動貸付機を、無人店舗の同じ場所に設置すれば、実質的に「預金することも借りることもできる銀行」を生み出すことができると考えた訳である。 私はこの案を実は2回日本の消費者金融に持ち込んで実現を図った。
外銀の方はこの構想をぜひ実現したいという姿勢だった。 だが、残念なことに私は2度とも空振りしてしまい、この構想は今のところ実現に至っていない。
最初の取引は、日本で1回、外銀の本国で1回のお見合いまではたいへん順調に進んだ。 さあ、いざ交渉に入ろうとなったところで、日本側の私の顧客は腰が引けてしまった。
二番目の取引は、私の日本側の顧客はすっかりやる気であった。 しかし最終的な価格交渉で折り合いが付かず、逆に外銀の方が下りてしまった。
その後この消費者金融会社は日本の同業者に買収された。 外銀の方は日本の会社と交渉するのは懲りてしまったのか、9ヵ月後には日本に現地法人がある母国の消費者金融会社を親ごと買ってしまった。
ということで、現在私はツー・ストライク。 もう一度空振りすると3振だが、まだもう1回はバットを振るチャンスがあると考えている。

今は次のことを考えている。 金融サービスは、消費者金融に限らず、庶民に密接な問題である。
私は今、大量失業時代を迎える日本で解雇されるサラRや、定職を持たないフリーターが小さいながらも一国一城の主として自立することを支援する金融、自営業者の日々の資金繰りを手伝える金融、老後の年金づくりなどのサービスを必要とする人々の役に立つ金融など、「需要家起点」の金融サービスの構築を、趣旨に賛同してくれる経営者を見い出し、実行に移してみたいと考えている。 いつまでも空振りばかりはしていられない。
需要家起点の教育最後に教育であるが、これはまだ構想を練っているところで、市場に出て当社が何か事を起こす段階までには至っていない。 しかし基本的な発想は金融と同じである。
今までの日本の教育サービスは完全に供給者起点で国民に提供されてきた。 誰もが文部科学省検定の教科書を使い、同じく同省の指導要領に則って公立・私立にかかわらず画一的な教育がなされた。
丸暗記が中心のこのような教育は、全員一緒に並んで田植えをする農民、一緒に行進して鉄砲を撃つ兵隊、ベルトコンベアーの横に一線にならんで自動車を作る工員を、均一に大量生産するのには向いていたのであろう。 しかし、現代のように、知的資産を最重要な生産資源とする時代にはまったく不向きなのである。
知的資産中心の世界で求められるのは、今まで誰も考えなかったことを世界で初めて考えつくような人間なのである。 そのような人材を産み出すには、子供という「需要家起点」の教育サービス提供システムに、全教育システムを作り直さなければならないということである。
またこれだけインターネットで世界の人々が結びつけられている時代だというのに、生徒と先生と家庭の間のコミュニケーションはどうなっているのだろうか。 旧態依然のままどころか、昔の方がまだましだったぐらいで、中学生になると先生とは没交渉に近い。

先生はいったい何に時間を使っているのであろうか。 先生は子供たちと過ごすよりも、より多くの時間を事務に使わざるをえない状態にある。
事務仕事はコンピューターに任せればいい。 教材、つまりコンテンツはどうだろう。
日本の教科書は画一的なうえに分量的には非常に薄い。 日本は10兆円の教育費を使って、高校生13万人、中学生13万人、合計26万人の不登校生を生んでいる。
繰り返しになるが文部科学省を頂点とする「供給起点」の教育サービス産業が、まったく機能不全に陥っているのである。 必要な対策は、この教育サービス提供システムを上下まっ逆さまにひっくり返して、需要家(生徒)起点のシステムに作り変えることであろう。
政府に頼っていたのでは、この発想の転換だけでも10年の月日を費やすだろう。 だから投資銀行家としては、市場の力を使ってこの改革を手がけてみたいと考えている。
企業における職場教育、成人の生涯教育、医療に関する国民教育、あらゆる教育分野においてコンテンツが未だ貧弱であると思われる。 サービスのデリバリーシステムも未発達である。
お金だけはたくさんかけている。 先端情報技術や近代マーケティングーシステムを導入し、もっと効率的に資金を使い、便利で、楽しく、成果の上がるシステムを構築できないか試してみたい。
文部科学省においても改革の論議はされているが、それはあくまで「文部科学省指導要領」という、全国統一の枠を維持することを前提としたものである。 「供給者起点」の発想を切り崩すことができない以上、真の改革を期待することは不可能であると感じている。
政府の仕事とは、常に市場に起こったことを後から追認をすることに過ぎない。 我々が作るべきは「市場ニーズ」に応えることのできる「市場が生み出すサービスーシステム」である。
市場は今、学校という枠にはまることを拒否した26万人もの子供たちを受け容れることのできる教育システムを渇望している。 「自由に働きたい」という強い思い意に染まない異動私が現在仕事をしている「働くための街ニューヨーク」と、私の仕事場については、おおむね紹介した。
日本で「働く」ということの意味するものと、同じ言葉が米国で意味するものと随分と違っているとお感じになった方も多いかと思う。 それではどのように違うかというと、その根底にあるのは、「自由」ということに対する価値観の置き方かと思う。


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